おならの話
私の人生はおならとともにあるといっても過言ではない。
小学校6年生のとき、歴史の先生の発案で
クラス全員で竪穴式住居を建てて全員で宿泊するという催しがあった。
近くの広場を借りて、木で骨組みをつくり、藁をしいていく、
テレビが取材にくる位、本格的なつくりだった。
夕方になってようやく完成した竪穴式住居をかこみ、
ドングリでつくった団子を食べたり、竹の楽器をつくって音楽を奏でたりした。
楽しい時間はあっという間に終わるもので、後は寝るのみである。
夜ごはんに食べた、ドングリの団子が悪かったのか
おならを我慢できずに、ずっと格闘していた。
しかも小学生達で固まっていて、なかなか1人になれない。
我慢の頂点に達し、誰にも気づかれぬよう忍者のように抜け出し家路に急いだ。
驚いたのは母である。
竪穴式住居に宿泊するはずの娘が、家にいるのだから。
「あれ、今日は泊まりじゃないの?」という声を尻目に
自室に逃げ込み「ぷぅ〜」と心ゆくまで放屁し、「また戻るね!」と
縄文時代に戻ったのである。
おならは、恋も引き裂く。
中学1年生だった私は、スポーツ万能Aくんに恋いこがれていた。
神様に思いが届いたのか、なんと3学期に2人でクラス委員になれることになった。
私がAくんのことを好きだと知っていた友人は「やったね〜、付き合っちゃうかもね」とはやし立てた。まんざらでもなかった私は、これを機に本当に付き合ってしまうかもしれない、と密かに天にものぼる気持ちで、付き合うまでのロードマップを妄想していた。
しかし、そんな浮かれた気分は、早くもその日の弁当タイムに打ち砕かれた。
弁当は5人くらいの班ごとに机をくっつけて弁当を食べる。
私の好きなAくんは隣の島にいた。
すると、Aくんの席の男の子たちが、習い立ての英語がエッチだ、
という話でもり盛り上がっていた。
バカな男子が
「ワン、トゥー、スリー、フォー、 セックスだ!」
とこれ見よがしに叫んでいる。女子は目を伏せて「やだ〜」と言っている。
そのバカな男子並みにくだらない私は、思わず大笑いしてしまった。
その瞬間に勢いよく
「ブホッッ」
と、クラス中に響くようなおならをしてしまったのだ。
当然私の周囲はざわつき、
「いま誰か屁しなかったか」と犯人探しがはじまった。
近くにいたAくんは当然私が犯人だと知っている。バカな男子は再び
「いま誰か屁しなかったか」
とアホの1つ覚えのように叫んでいる。
近くにいたAくんは、とどめをさすように
「くっせえ」
とつぶやいた。当然そこで私の恋も終わったのである。
先日祖母の家に行ったときに、
いかに私がおならで悩んでいたか、当時の話とともに打ち明けた。
そうすると祖母は大爆笑しながらこう言ったのだ。
「おばあちゃんも若い頃、職場でおならばっかりしよって、
歩くたびにプープープープーでるけん、会社の人に怒られて
おなら1回につき罰金払わせられよっちゃん」
DNAは偉大である。